横浜市と川崎市は隣り合う政令指定都市ですが、二人以上世帯の年間収入には大きな差があります。

  • 横浜市:955.2万円
  • 川崎市:1,094.0万円

川崎市の方が138.8万円高く、月額に直すと単純計算で約11万6,000円の差です。

この差は「川崎の方が東京に近いから」だけでは説明できません。東京へ通勤して東京水準の給与を得る世帯、武蔵小杉などへ流入した現役の共働き世帯、そして川崎市内のIT・研究開発・製造業の雇用が重なっています。

一方の横浜市は、東急沿線の高所得住宅地から郊外の大規模住宅地まで、性格の違う地域を抱える巨大都市です。

数字の差は、住民一人ひとりの優劣ではなく、誰が住み、どこで働く世帯が多いかという都市構造の違いを表しています。

この記事の結論

川崎市の平均を押し上げるのは、東京通勤、市内の高付加価値産業、武蔵小杉などへの現役共働き世帯の流入です。横浜市は性格の違う18区を平均するため、高所得地域の影響が薄まりやすくなります。

横浜市 955.2万円 二人以上世帯・年収
川崎市 1,094.0万円 二人以上世帯・年収
両市の差 138.8万円 川崎市が上回る

横浜市と川崎市の年間収入を年代別に比較

世帯主年齢横浜市川崎市差額(川崎−横浜)
平均955.2万円1,094.0万円+138.8万円
30〜39歳非公表975.2万円
40〜49歳非公表1,276.3万円
50〜59歳1,150.3万円1,329.0万円+178.7万円
60〜69歳1,119.8万円983.0万円-136.8万円
70〜79歳694.4万円844.9万円+150.5万円

出典:総務省「全国家計構造調査(2019年)」、二人以上世帯

平均より50代の差が大きい

全体平均では川崎市が横浜市を138.8万円上回りますが、50〜59歳では差が178.7万円まで広がります。

50代は、勤続年数が長くなり、管理職や専門職の比率も高くなる年代です。川崎市の平均が高い最大の理由は、単に高齢者や資産家が多いことではなく、現役で働く高所得世帯が厚いことだと読めます。

では、なぜ川崎市にはそのような世帯が集まりやすいのでしょうか。

数字の読みどころ

全体平均の差は138.8万円ですが、50〜59歳では178.7万円に広がります。川崎市の高さは、資産家全般というより、働き盛りの高所得世帯の厚さに特徴があります。

理由1|東京で稼ぎ、川崎に住む世帯が多い

この調査は世帯の居住地を基準にした家計統計です。

勤務先が丸の内、大手町、渋谷、品川など東京都内でも、住まいが川崎市なら、その収入は川崎市の世帯収入として集計されます。

川崎市は多摩川を挟んで東京と接し、東急東横線・目黒線、小田急線、JR横須賀線などで都心へ通勤しやすい地域を抱えています。武蔵小杉、新百合ヶ丘、宮前平などは、東京の給与水準と神奈川県の居住地が組み合わさる代表的なエリアです。

横浜市にも、たまプラーザ、青葉台、日吉など東京通勤者の多い住宅地があります。それでも市全体で差がつくのは、川崎市の方が東京近接エリアの比重が大きく、その影響が平均に表れやすいからです。

理由1をひとことで

「東京で稼ぎ、川崎に住む」世帯が市の平均に表れやすい。居住地ベースの家計統計だからこそ見える効果です。

理由2|川崎市内にも高付加価値の仕事がある

川崎市は東京のベッドタウンであると同時に、働く街でもあります。

中原区には富士通の本店があり、幸区の川崎駅西口には東芝のスマートコミュニティセンターがあります。川崎区にはJFEスチール東日本製鉄所の京浜地区があり、臨海部には製造・物流の事業所が集まっています。

つまり川崎市の所得を支えているのは、

「東京で働く高所得世帯」+「川崎市内のIT・研究開発・製造業で働く世帯」

という二つの層です。

交通利便性だけの住宅都市ではなく、市内にも専門職・技術職・安定した製造業雇用がある。この二重構造が、川崎市の世帯収入を押し上げる土台になっています。

理由2をひとことで

川崎市はベッドタウンだけではありません。富士通、東芝、JFEスチールなどの市内雇用も所得を支えています。

理由3|武蔵小杉への転入が平均値を変えた

武蔵小杉駅周辺では再開発とタワーマンション建設が進み、東京都心へ通勤する30〜40代の共働き世帯を受け入れてきました。

ここで重要なのは、地域の平均所得が上がる理由です。

既存住民全員の給料が急に増えたのではなく、高所得の新しい住民が増えれば、市や区の平均値そのものが上がります。武蔵小杉は、街の再開発と住民構成の変化が統計を動かす典型例です。

川崎市の1,094万円は「典型的な川崎市民の年収」ではありません。現役の共働き世帯が集まる地域の影響を強く受けた平均値です。

理由3をひとことで

武蔵小杉の再開発では、既存住民全員の給料が上がったのではなく、高所得の新規転入者が増えて平均値が動いたと考えるのがポイントです。

横浜市は「いろいろな横浜」を平均している

横浜市にも高所得世帯が多い地域と高付加価値の雇用があります。

青葉区・都筑区・港北区には東急沿線の住宅地が広がり、西区のみなとみらいには日産自動車のグローバル本社をはじめ企業拠点が集まっています。

それでも平均が川崎市を下回るのは、横浜市が広く、人口規模も大きいからです。

横浜駅・みなとみらい、東急沿線、京浜工業地帯に近い鶴見、南西部の郊外住宅地では、住民の年齢、職業、通勤先、世帯構成が異なります。

したがって955.2万円は、「横浜市民の標準的な年収」というより、性格の違う18区を一つに混ぜた平均値と考える方が実態に近いでしょう。

60代で横浜市が逆転する意味

50〜59歳では川崎市が178.7万円上回るのに、60〜69歳では横浜市が136.8万円上回ります。

この逆転は、川崎市の高収入が特に現役世代に支えられているという読み方と整合します。東京勤務や市内のIT・製造業で高い給与を得ていた世帯でも、退職や再雇用によって60代に収入が下がれば、川崎市の優位は小さくなります。

一方で、60代の数字だけから、横浜市では資産収入が多い、あるいは就業継続率が高いとまでは断定できません。年代別の標本数は限られ、世帯人数や収入源の違いも影響するためです。

重要なのは、川崎市がどの年代でも一律に豊かなわけではないことです。平均の高さは、働き盛りの世帯が作っている性格が強いと読めます。

まとめ|川崎は「現役世帯が稼ぐ街」、横浜は「多様な生活圏を抱える巨大都市」

二人以上世帯の年間収入は、横浜市955.2万円、川崎市1,094.0万円で、川崎市が138.8万円上回りました。

川崎市の平均が高い主な理由は、次の三つです。

  1. 東京へ通勤し、東京水準の給与を得る世帯が多い
  2. 富士通、東芝、JFEスチールなど、市内にもIT・研究開発・製造業の雇用がある
  3. 武蔵小杉などへ高所得の共働き世帯が流入し、住民構成そのものが変わった

一方の横浜市は、青葉・都筑・港北の東京通勤圏、みなとみらいの業務地区、広い郊外住宅地までを一つの平均に含めています。

したがって今回の数字が示す結論は、単純な「川崎の方がお金持ち」ではありません。

この統計から言えること

川崎市は東京通勤と市内産業の両方で現役世帯が稼ぐ街。横浜市は高所得地域を持ちながらも、異なる年代・所得層・生活圏を抱えるため平均がならされる巨大都市です。約139万円の差は、この二つの都市の作られ方の違いを表しています。


📊 分析ノート

  • 使用統計:総務省「全国家計構造調査(世帯収入)」(統計表ID:0003426439、e-Statで見る
  • 調査概要総務省統計局「2019年全国家計構造調査」
  • 指標:二人以上世帯・世帯主年齢階級別の1世帯当たり年間収入額
  • 対象地域・年:横浜市・川崎市、2019年
  • 独自集計:公表値を万円換算し、両市の差額を計算
  • データ取得日:2026年6月6日
  • 注意点:横浜市の30〜39歳、40〜49歳は公表値がありません。本文の地域・産業に関する説明は、統計表から直接確認できる数値ではなく、提供された地域資料と公開情報を踏まえた考察です。平均値は個々の世帯の収入を示すものではありません。

※ 表の数値は上記統計データをもとに独自に整理しています。