東京23区は、住んでいる人口より昼間人口が約261万人多い。一方、横浜市は約28万人、川崎市は約20万人少なくなります。同じ首都圏の大都市でも、通勤・通学で人を集める役割と、働く人の暮らしを支える役割には明確な違いがあります。
2020年の昼夜間人口比率は、東京23区が126.8、横浜市が92.5、川崎市が87.3。さらに千葉市・さいたま市・相模原市を並べると、東京周辺の都市をひとまとめに「ベッドタウン」と呼ぶだけでは見えない差が浮かびます。
この記事では、e-Stat「社会・人口統計体系」のデータを使い、東京23区と周辺5市を同じ2020年の数値で比較します。東京都全体や、首都圏の全市区町村を対象にしたランキングではありません。
昼間人口・夜間人口・昼夜間人口比率の違い
夜間人口は、その地域にふだん住んでいる人口です。「夜に街を歩いている人数」ではありません。
昼間人口は、常住人口に通勤・通学による流入を加え、流出を差し引いた人口です。駅の改札通過人数や、観光客・買い物客を含めた日々の人流とは異なります。
昼夜間人口比率は、次の式で表します。
昼夜間人口比率=昼間人口÷夜間人口×100
100を超える地域では通勤・通学の流入が流出を上回り、100を下回る地域では逆になります。東京23区の126.8は、住民100人に対して昼間人口が約127人になる規模を示します。総務省統計局の定義
6地域を比較すると、千葉市は100に近く、川崎市は87.3
| 地域 | 夜間人口(常住人口) | 昼間人口 | 昼間-夜間 | 昼夜間人口比率 |
|---|---|---|---|---|
| 東京23区 | 9,733,276人 | 12,346,348人 | +2,613,072人 | 126.8 |
| 千葉市 | 974,951人 | 956,669人 | −18,282人 | 98.1 |
| さいたま市 | 1,324,025人 | 1,229,480人 | −94,545人 | 92.9 |
| 横浜市 | 3,777,491人 | 3,495,975人 | −281,516人 | 92.5 |
| 相模原市 | 725,493人 | 645,219人 | −80,274人 | 88.9 |
| 川崎市 | 1,538,262人 | 1,342,397人 | −195,865人 | 87.3 |
出典:総務省「社会・人口統計体系」人口・世帯、2020年。昼夜間人口比率は収録値、人口差は筆者計算。千葉市が公表する比較表でも、周辺5市の昼間人口は上表と一致します。千葉市観光振興検討会議報告書
読みどころは二つあります。一つは、東京23区だけが100を大きく上回ること。もう一つは、周辺5市の中にも98.1から87.3まで差があることです。東京へのアクセスがある都市でも、市内に集まる仕事や学校の規模、住宅地の広がり方によって、通勤・通学の収支は変わります。
東京23区は、住む人口に加えて約261万人を受け止める
東京23区の夜間人口は約973万人、昼間人口は約1,235万人です。その差は約261万人。単に住民が多いだけでなく、区域外から通勤・通学する人々の活動を受け止める都市になっています。
丸の内・大手町の業務集積、新宿や渋谷などの拠点、大学や専門学校の集積を、広域の鉄道網が結びます。仕事や学びの目的地が集中していることが、この大きな流入超過を読む背景です。ただし、今回の集計だけで特定の駅や企業が何人分を生み出したかまでは分かりません。
また、この約261万人は流入人数そのものではなく、流入と流出を差し引いた人数です。周辺5市だけから来ている人数でもありません。東京23区の値には、比較表に含めていない地域との往来も反映されています。
千葉市は、東京への通勤圏でありながら地域の中心でもある
周辺5市で最も100に近いのは千葉市です。夜間人口約97.5万人に対して昼間人口約95.7万人で、差は約1.8万人にとどまります。
千葉市には県庁所在地としての行政機能、千葉駅周辺の商業・業務機能、幕張新都心などの拠点があります。東京方面へ出る人がいる一方、市外から千葉市へ来る人もいる。県内の中心都市としての役割が、東京通勤圏という側面と重なっています。
ただし、98.1だからといって「住民の98.1%が市内で働いている」という意味ではありません。市外へ出る人と市内へ入る人が多くても、両者が近い規模なら比率は100に近づきます。市内就業率とは別の指標です。
横浜市とさいたま市は比率が近くても、人口差の規模が違う
横浜市の比率は92.5、さいたま市は92.9で、差は0.4ポイントです。しかし、昼間人口と夜間人口の差は横浜市が約28.2万人、さいたま市が約9.5万人。横浜市は常住人口が大きいため、似た比率でも差し引きの人数は大きくなります。
横浜市には横浜駅周辺、みなとみらい、関内などの仕事の拠点があり、さいたま市にも大宮の交通・商業機能や浦和の行政機能があります。どちらも市内に仕事がない都市ではありません。そのうえで、住宅地として受け入れる人口と、市外への通勤・通学の大きさが、100を下回る数値に表れています。
都市の性格を比べるなら比率、差し引きの規模を知るなら人数。二つを併せて見ることで、「横浜のほうが人が減るから、さいたまより住宅都市の性格が圧倒的に強い」という読み違いを避けられます。
川崎市は大きな産業集積と、強い住宅都市の性格が両立する
川崎市の昼夜間人口比率は87.3で、今回の6地域では最も低い値です。昼間人口は約134.2万人で、夜間人口より約19.6万人少なくなります。
川崎には臨海部の産業集積や研究開発の拠点があり、同時に東京・横浜方面へ通いやすい住宅地も広がっています。武蔵小杉などの交通結節点や、市北部の鉄道沿線住宅地を考えると、「工業都市」と「広域通勤圏の住宅都市」は両立する特徴だと捉えられます。
87.3という数値が示すのは、市全体で通勤・通学の流出が流入を上回ることです。これだけで市内の企業が弱い、給与が低い、暮らしにくいという結論にはなりません。また、差の約19.6万人をそのまま東京への通勤者数とすることもできません。行き先別の人数には別の集計が必要です。
相模原市の88.9も100を下回りますが、市内外への移動先や交通網は川崎市と同じではありません。似た比率の都市でも、どこへ通い、どこから人を集めるかは分けて考える必要があります。
街選びでは「100を超えるか」より、住む場所と働く場所の組み合わせを見る
この比較から見えるのは、東京23区への大きな通勤・通学の集中と、その周囲にある都市の役割の違いです。千葉市は人口の出入りが差し引きで比較的均衡し、横浜・さいたまは市内の拠点機能と広域通勤の住宅地が重なります。川崎・相模原は、今回の比較では流出超過の割合が大きい地域です。
住む街を選ぶときには、市の昼夜間人口比率だけで優劣をつけるより、自分の勤務先へどの路線で通うか、乗り換えは何回か、家の近くにも働く選択肢があるかを確認するほうが実用的です。同じ市でも、駅や区が変われば生活圏は変わります。
東京周辺の都市は、すべて同じベッドタウンではありません。昼夜間人口を人数と比率の両方で比べると、東京への通勤圏を支えながら、それぞれが独自の仕事・行政・商業の拠点を持つ姿が見えてきます。
データと関連する記事
使用統計はe-Stat「社会・人口統計体系」人口・世帯(統計表ID:0000020101)です。地域は東京都特別区部・横浜市・川崎市・さいたま市・千葉市・相模原市。年次は2020年に統一し、総人口(A1101)、昼間人口(A6107)、昼夜間人口比率(A6108)を使っています。A6108は人口ではなく比率です。
2026年現在の人流を測ったものではありません。また、同じ国勢調査年でも公表表や不詳の扱いによって値が異なる場合があるため、本稿では社会・人口統計体系の系列に統一しました。
